DAILY DISCOVERY デイリーディスカバリー

家の中の遊牧民

2024.08.08

私たちは空間の使い方や部屋の名前に案外と縛られている。家づくりが始まった段階で、打合せの図面には確かにスペースの名称は便宜上必要ではある。しかし間取りが決定したとき、それらはもう必要ではないのだ。部屋に名前を付けた瞬間、実は空間の役割としての許容範囲は狭まっていく。役割を決めつけずに、たくさんのバリエーションを最初から準備出来ていると思えたほうが安心な気もする。

本を読んだり、くつろいだり、食事をしたり、お茶したり。そんな一つひとつの行動すべてを自由にしたい。決められた場所でルーティンのように過ごすのではなく、時には大きな窓から差し込む陽の光を追いかけるように、その場所を選んだっていい。

睡眠だってそう。我が家の冬、実は薪ストーブのあるリビングが最高の寝場所だったりする。天井から降ってくるような独特の暖かさ。時々マットレスをリビングに持ち込み、薪ストーブのそばで朝まで眠る。冬でもTシャツに短パン。布団をかけずとも十分に暖かい。この特等席を捨ててまで寝室に向かうのはあまりにも勿体ない。睡眠は必ずしも寝室でなくていい。夏であれば風通しのいい場所へ。気分によって眠る空間を変えてもいいのではないかと思う。

日々の暮らしは誰かに見せるものではないし、家の中では本当の快適さを優先して誰もがもっと自由であっていいはず。少なくとも私は自由だ。朝目を覚ますと、そこはリビング。本棚や薪ストーブやテーブルなどの家具、一瞬にして自分の好きなものに囲まれている幸せ…。

私の場合、仕事と休日も。その両方の時間を無理やり分けずとも、むしろそれぞれに明確な線引きがないことが自分にとってちょうどよいライフスタイルであることに似ている気がする。