日々の会話などからお酒好きだと見られる。実際酒好きだけど。どんなお店で酒を飲むのか、と聞かれることも多い。改めて自分の好きな店、よく立ち寄る店のことを思い出してみると、カウンターがメインのお店が好きなことに気付く。
カウンターからは調理風景が見えるため、仕事ぶりを思い知ることができる。店主が常に前面にいることでその店ののれんは守られる。通常メニューの他に、黒板やホワイトボードには毎日のおすすめが記されている。わくわくする。
「酒飲みの店主って、やっぱり酒飲みの気持ちを分かってくれてる」。それが酒の品揃えや料理、その提供の仕方にも表れている。決して雄弁ではないが、こちらが聞きたい大切なことは丁寧に教えてくれる。一概に高い・安いを語るべきではないが、総じてその価格には偽りがないと思える。
特段新規開拓はせず、気に入ったいくつかのお店を順に通っているのは、心から信頼のおける居場所はどこにでもあるわけではないことを知ってしまったから。僕らが店を選ぶ理由。ほろ酔いのカウンターで、それに自らの会社や仕事を重ねて思いを巡らすこともある。お客様の最前線に立つというスタンス。お客様と会話することで、潜在的な願望を汲み取りながら日々のメニューが自ずと変わっていく…
小さくても頼りがいのある、そんな会社をつくりたかった。
酒の飲み方は、特設ページ「理想の暮らしを探す旅」の「たなかのなかみ」にも書いた。歌舞伎役者・二代目中村吉右衛門さん演ずる「鬼平犯科帳」の長谷川平蔵が理想だ。作者池波正太郎さんのコラム「男の作法」からは粋な酒飲みを学んだ。
ちなみにカウンターで二人飲みするときは、必ず右側に陣取る。漫才でいうとボケの立ち位置。田中さんが来る日はいつも繁盛すると言っていただくと実は嬉しかったりするが、その気持ちを隠しつつ心の中では「みんなこの居心地がわかっているからですよ」とつぶやいている。